社労士に受かる手順
社会保険労務士試験の過去12年(平成26年〜令和7年)の本試験12回を全問分析しました。 択一式840問4,198肢と選択式72問360空欄です。 そのうえで「7科目をどの順で覚えるか」を数字で示します。 宅建のように配点の大きい科目へ寄せる手は、この試験では使えません。理由から書きます。
択一式の問題数
肢の数
条文の数
またがる束
1. 配点では選べません
択一式は7科目それぞれ10問で、12年とも完全に均等でした。さらに科目ごとに最低点(足切り)があるため、どれかを捨てる戦略が取れません。「配点の大きい科目に寄せる」という宅建で効く手が、この試験には無いということです。
| 科目 | 択一式 | 肢 | 受験者の正解率(中央値) |
|---|---|---|---|
| 労災保険法(徴収法を含む) | 120問 | 600肢 | 87.3% |
| 労働基準法及び労働安全衛生法 | 120問 | 600肢 | 87.1% |
| 健康保険法 | 120問 | 600肢 | 84.5% |
| 雇用保険法(徴収法を含む) | 120問 | 600肢 | 83.7% |
| 厚生年金保険法 | 120問 | 600肢 | 83.6% |
| 国民年金法 | 120問 | 600肢 | 83.3% |
| 労務管理その他の労働及び社会保険に関する一般常識 | 120問 | 600肢 | 83.0% |
正解率は出題元に記録された受験者の正解率の中央値です。科目ごとの差は最大でも4ポイント台で、「この科目は簡単だから後回し」という判断もできません。
2. 合格の条件は2段あります
総得点だけでは決まりません。科目ごとに最低点(足切り)があり、1科目でも割ると総得点が足りていても不合格です。しかも足切りは択一式の7科目と選択式の8科目に別々にかかるので、通らなければならない関門は15個あります。
そして基準は毎年動きます。過去12年の合格基準を試験センターの公表資料から拾うと、総得点は選択式21〜27点、択一式42〜45点の幅で動いていました。12年のうち12年に「試験の難易度に差が生じたことから、昨年度試験の合格基準を補正した」と書かれています。「毎年◯点で合格」という数字はありません。
| 年 | 選択式(40点満点) | 択一式(70点満点) |
|---|---|---|
| 平成26年 | 26点 | 45点 |
| 平成27年 | 21点 | 45点 |
| 平成28年 | 23点 | 42点 |
| 平成29年 | 24点 | 45点 |
| 平成30年 | 23点 | 45点 |
| 令和元年 | 26点 | 43点 |
| 令和2年 | 25点 | 44点 |
| 令和3年 | 24点 | 45点 |
| 令和4年 | 27点 | 44点 |
| 令和5年 | 26点 | 45点 |
| 令和6年 | 25点 | 44点 |
| 令和7年 | 22点 | 42点 |
原則は選択式3点・択一式4点ですが、難しかった科目は下げる補正が入ります。12年で下げられた回数を数えました。
| 科目 | 選択式で下げられた回数 | 択一式で下げられた回数 |
|---|---|---|
| 労務管理その他の労働に関する一般常識 | 6回 | 0回 |
| 社会保険に関する一般常識 | 5回 | 0回 |
| 健康保険法 | 5回 | 0回 |
| 雇用保険法(徴収法を含む) | 2回 | 1回 |
| 国民年金法 | 2回 | 1回 |
| 厚生年金保険法 | 1回 | 2回 |
| 労務管理その他の労働及び社会保険に関する一般常識 | 0回 | 2回 |
| 労災保険法(徴収法を含む) | 1回 | 0回 |
選択式のほうが荒れます。12年のうち10年で選択式に救済が入りました(択一式は4年)。最も多いのは労務管理その他の労働に関する一般常識で6回。令和3年にはここが1点以上まで下がりました。
理由は問の数です。選択式は1科目5空欄しかないので、知らない語が2つ来ると足切りに届きません。択一式の10問なら1問落としても効きませんが、選択式では致命傷になります。選択式の対策は「点を伸ばす」ではなく「知らない語を減らす」です。
直近(令和7年)は、選択式が総得点22点かつ各科目3点以上(ただし労務管理その他の労働に関する一般常識・社会保険に関する一般常識・労災保険法(徴収法を含む)は2点以上)、択一式が総得点42点かつ各科目4点以上(ただし雇用保険法(徴収法を含む)は3点以上)でした。出どころは試験センター「合格基準及び正答について」です。
3. 配点で選べないなら「1回で複数科目に効く束」から始めます
問われた条文1,215件を論点ごとにまとめると525束になり、そのうち69束が2科目以上にまたがります。またがる束が覆う肢は956件で、全体の23%です。配点で選べないなら、1回学んで効く範囲が広い順に選ぶのが素直です。
| 束 | 数 | またがる科目 | 出題肢 |
|---|---|---|---|
| 不服申立て | 6科目 | 一般常識/健保/労災・徴収/厚年/国年/雇用・徴収 | 59肢 |
| 時効 | 5科目 | 健保/労災・徴収/厚年/国年/雇用・徴収 | 30肢 |
| 罰則 | 5科目 | 健保/労災・徴収/厚年/国年/雇用・徴収 | 21肢 |
| 届出 | 4科目 | 健保/厚年/国年/雇用・徴収 | 106肢 |
| 給付制限 | 3科目 | 健保/厚年/雇用・徴収 | 35肢 |
| 賃金 | 3科目 | 労基・安衛/労災・徴収/雇用・徴収 | 29肢 |
| 延滞金 | 3科目 | 健保/厚年/雇用・徴収 | 20肢 |
| 印紙保険料 | 2科目 | 労災・徴収/雇用・徴収 | 37肢 |
| 労働保険事務組合 | 2科目 | 労災・徴収/雇用・徴収 | 28肢 |
| 労働保険料等の申告及び納付 | 2科目 | 労災・徴収/雇用・徴収 | 32肢 |
「時効」は5科目31肢の束です。厚生年金保険法92条は「2年ではなく5年」、健康保険法106条は「5年ではなく2年」。この真逆の対比は、科目ごとに勉強していると一生見えません。
4. 上から何束で、肢の何%に届くか
| 覆う肢の割合 | 必要な束の数 |
|---|---|
| 30% | 30束 |
| 50% | 71束 |
| 70% | 144束 |
全525束を上から全部やる話ではありません。71束で肢の半分に届きます。出題肢20件以上の51束については、条文の原文を全文と出題肢数・入れ替えの型をまとめてあります(ログインした方がご覧になれます)。
5. 覚えるだけでは解けません(実測)
5肢択一で19.6%。当てずっぽうの20%の幅(14.7〜25.3%)の中でした。肢を1つずつ○×で判定させても、いつも「誤」と答える53.7%に対して57.1%で、差は当てずっぽうのばらつきに埋もれます。
範囲が足りないからではありません。令和7年度の肢が引く条文の76%は11年分の教材にすでにありました。足りないのは正誤の判定です。
理由は肢の作り方にあります。よく似た過去問がある肢114件のうち、55件は答えが反転していました。たとえば国民年金基金の一時金について、平成27年は「租税その他の公課を課することができる」で誤り、令和7年は「課することはできない」で正しい。1語だけ入れ替えて答えを裏返してきます。文章で覚えていると、この1語に気づけません。
だから条文の原文を読みます。要件(どういうときに)と効果(どうなる)を押さえておけば、入れ替えられた1語が浮きます。
6. 選択式は、科目によって勉強する場所が違います
選択式は72問360空欄を分析しました。64問は20語の共通語群から5つの空欄を埋める形、8問は空欄ごとに4択が付く形です。
360空欄の正解は338種類あり、2回以上出た語は17種しかありません。ほぼ繰り返さないので、語のリストを覚えても届きません。覚える対象は語ではなくどこを見れば載っているかです。
そこで360空欄を「何を知っていれば取れるか」で分けました。
| 要るもの | 空欄 | 割合 |
|---|---|---|
| 条文の語 | 167 | 46.4% |
| その他の用語 | 93 | 25.8% |
| 数字(統計・金額) | 77 | 21.4% |
| 長い言い回し(判例・条文の抜き書き) | 13 | 3.6% |
| 固有名(調査・助成金・認定制度) | 10 | 2.8% |
この内訳が科目でまるで違います。条文の語が多い科目は条文を読めば取れ、少ない科目は読んでも取れません。
| 科目 | 条文の語 | 数字(統計) | その他 |
|---|---|---|---|
| 国民年金法 | 33 | 3 | 9 |
| 厚生年金保険法 | 28 | 4 | 13 |
| 健康保険法 | 24 | 9 | 12 |
| 社会保険に関する一般常識 | 21 | 15 | 9 |
| 労働基準法及び労働安全衛生法 | 20 | 5 | 20 |
| 雇用保険法(徴収法を含む) | 19 | 17 | 9 |
| 労災保険法(徴収法を含む) | 13 | 15 | 17 |
| 労務管理その他の労働に関する一般常識 | 9 | 9 | 27 |
国民年金法は45空欄のうち33が条文の語で、条文を読んだぶんがそのまま点になります。いっぽう労務管理その他の労働に関する一般常識は9しかなく、調査名・助成金名・認定制度名といった固有名が8件(全10件のうち)ここに集まります。条文をいくら読んでも取れない科目があるということです。救済が最も多いのがこの科目だったのは、これが理由です。
一般常識は「どこを見るか」まで決まっています
労一と社一の18問のうち11問は、問題文が資料の名前をそのまま書いています。令和2年の労一は5空欄すべてが調査の名前そのものでした。つまり、条文ではなくこの資料を見ておくかどうかで決まります。
| 名前が出た資料 | 出た年 |
|---|---|
| 労働力調査 | R2・R6・R7 |
| 厚生労働白書 | R5・R6 |
| 就業構造基本調査 | R1・R2 |
| 人口動態統計 | H30 |
| 介護保険事業状況報告 | R6 |
| 国民医療費の概況 | R4 |
| 国民年金の加入・保険料納付状況 | R7 |
| 国民生活基礎調査の概況 | R6 |
| 就労条件総合調査 | R2 |
| 改善基準告示 | R6 |
| 社会保障費用統計 | R2 |
| 能力開発基本調査 | H29 |
| 雇用動向調査 | R2 |
| 雇用均等基本調査 | R2 |
年度版の表記(「令和5年版」など)は外してまとめています。受験する年の最新版を見てください。労働力調査・就業構造基本調査・厚生労働白書は複数の年で出ています。
共通語群の20語は五十音順に並べてあるだけで、中身は空欄ごとの組に分かれています。正解と同じ型の語(同じ単位の数字、同じ末尾の用語)を数えると、中央値2語・平均3.2語でした(320空欄で測定)。型で絞ってから読むと、数語の勝負になります。
7. 何を読めばいいか
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